最近になってアオリ可能な機を入手、アダプタなどを製作し、まだ数回の経験でアオリ初心者ではあるが、アオリがどういったものなのか少し考えてみた。
アオリ撮影に関しては、資料が少なく、ネットでもめぼしいものはなかなか見つからない。その知識のほとんどは大判カメラの専門書に寄るしかない。
最初はシフトレンズとの違いもよくわかっていなかったが、実機をいじっている間にどういったものなのか、徐々に理解してきた。
通常、被写体はフォーカス面(フィルム、あるいは撮像面)に正対している。レンズ軸はフィルム面に直角である。
そのため、被写界深度などのレンズ特性の影響をそのまま受ける。
アオリという技術は、レンズ軸とフォーカス面の正対関係を崩すことによって、さまざまな制約を緩和、あるいは、誇張したりすることが出来るものといえる。
そんな中で発見したことが、ひとつ...。
まだもう少し撮影を重ねて検証をしてみないと、はっきりとはわからないと断っておくが。
ブツ撮りなどで、その上がりをみて感じる第一印象は、「リアル感が強い」ということ。
普通のマクロ、またはそれに近い撮影では、ピントの合う範囲がごく狭く、前後はボケボケということはよくある。
だからかな絞り込むことも多いが、それでも理想的にボケが解消されるとは限らない。
しかしアオリを使うと、レンズ軸をフィルム面に対し傾けることが可能になるので、条件にもよるが、手前から奥までピントを合わせるなどといったことが可能になる(ピントはそれでも「面」であるから、絞込みをプラスする必要もある)。
その上がりの写真は、ぱっと見、何の変哲もなく写っているのだが、リアル感が強く感じられると思う。
下の画は、アオリなしで撮ったショット。
少し奥ピンで、右軍艦部と、左奥、レンズ奥にピンがきている。
※斜め上から撮っているピント面をイメージして欲しい。
これは、レンズを右前にスイングしたもの。
左前軍艦部あたり、またそれに近い面にピンがきたが、後ろがボケてしまった。
それではということで、絞って被写界深度を稼いでみた。
これでかなり全体的にピントがでたかな?
まだまだ初心者で、テクニック不足もあるが、手順的には、こんな感じで試行錯誤しているのである。
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ところで、アオリ技法を逆手にとった「ミニチュア写真」なる分野がある。
まずは、このミニチュア写真を見て欲しい。
どうだろうか。ジオラマに見えるだろうか。
実は、これは山の上から撮った実写だ。
これが普通の撮影。
本来ピントの合う範囲を広げる目的でレンズ、フィルム面を傾けるのだが、この技法では逆に使用し、ピントが一部分しか合わないようにする。
効果的に行うには俯瞰(上から見下ろす)で撮りミニチュアのアングルに近づける。
これにより実際の風景なのに、どう見てもミニチュア風景に見えて(錯覚して)しまうわけだ。
これら2者の性質はたぶん、どちらも人間がものを見るときの目と頭の働きに関係すると思う。
人間の目は優れたAF(オートフォーカス)だ。意識してぼかさない限り、見た瞬間にフォーカスする。
だからものを見る時に、手前から奥にフォーカス(ボケ)が移動するなんてことは意識して、かなり努力してやらない限り、ない。
ピントは合っていて当然、ボケていればそれは絵か写真だと自動的に認識、切り替えしてしまうのではないだろうか。
アオリを使ったフォーカス範囲の広い写真は、そういった目の動きにあたかも追従したように「よく見えて(錯覚)」しまうのはと考えられる。
そういったところがリアル感に繋がっていると考えているがどうだろう。
では、よく100mm程度の焦点距離を使い、被写体の背景をぼかして撮るポートレートなどで、立体感が感じられるというのはなぜだろう。
いや、それは立体感であり、リアリティはまた違うのではないかと思う。
それは絵画技法に近いのかもしれない。
背景の省略により、主題を強調するという。